吉祥寺週3ベーカリー「2PaPas sometimes a girl」は営業終了。調布市で「MUCHAMIの小さなパン教室」を行う。不定期のパンイベント(押上・ししまる食堂、両国・青空市ヤッチャバなど)では、パン教室Atelier Rとのコラボベーカリー「Ra+Ra BAKERY(ララベーカリー)」の名で活動中。

by 2papas_girl

ブックレビュー7

パーク・ライフ/吉田修一著

 本書について語るのは難しい。何か事件が起こるわけでも、愛や憎しみといった強い感情が渦巻いているわけでもない。ただ、何も起こらないようで何かが起こっている、ような気がする、といった極めて微小な予感めいた波動が静かに全身を伝ってくる。極めて微小なのにそれが体を突き抜けた後にはなぜかしら確固たる清々しさと希望のようなものさえ残る。大変まどろっこしいが、そんな作品と言っておこうか。

 この、説明すると「ような」のオンパレードになってしまう作品にきちんと現実感が伴い、それゆえの説得力があるのは著者特有のひんやりとした現代的センスのせいだろう。男女が言葉を交わしたきっかけの臓器移植ネットワークの広告、本来の主不在の部屋で寝泊まりする男、中が空洞のアンティークの人体模型、ネット上で世界を旅する「ぼくの分身」、スターバックスの女性客がみんな自分に見えると言う女。

 私たちはばらばらに生きている。自分の体と心も、見えているものと実際見ているものも、私の世界とあなたの世界も、ばらばらに。

 本書を携えて日比谷公園に行ってみてほしい。作品と地続きになったこの場所の心字池を見下ろすベンチから園内をぼんやり眺めていると、ミニチュアサイズと化した自分を取り巻く世界を他人の目で傍観しているような不思議な感覚に陥るだろう。見えるものは多分ばらばらだけど、各々に見えて来るものがきっとある。〈A〉
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by 2papas_girl | 2013-07-04 09:32 |